特集荻野恭子さんの世界の発酵食
50カ国以上の家庭料理を食べ歩き、研究を重ねる荻野恭子さんに、世界の発酵食について伺います。第4回はロシアの乳酸発酵漬けを使った代表的な料理レシピ2品をご紹介します。
荻野恭子さん
料理研究家。サロン・ド・キュイジーヌ主宰。1974年よりユーラシアをメインに50カ国以上を訪れ、現地の家庭で料理を習い、食文化の研究を続ける。
さて、今回は、前回仕込んだ「キャベツの乳酸発酵漬け」のアレンジ料理を2品ご紹介します。
ロシアの家庭に遊びに伺うと、必ずと言って良いほど「ちょっとご飯食べて行きなさいよ」と誘われます。皆、「食べてみて!ダーチャ(週末農園)で作ったの!」と、夏の間に育てた野菜で仕込んだ自慢の保存食を使い、手際よく何品もの料理を作ってもてなしてくれます。
なかでも、「キャベツの乳酸発酵漬け」を調味料代わりにする伝統的なキャベツのスープ「シチー」や、肉や魚などのたんぱく質と野菜、「キャベツの乳酸発酵漬け」を重ね、乳製品をソースにして焼き上げる「重ね蒸し焼き」などは、家庭料理の定番です。特別な素材は使っていませんし、塩で味を調える程度なのですが、実に味わい深く、準備も楽で効率のよい料理といえます。
前回もお話ししましたが、「キャベツの乳酸発酵漬け」に加える野菜の種類が多いほど、アレンジする際に準備する野菜の数は少なくてすみます。あとから加える野菜類は、その時の旬のものを加えると良いと思います。こうすることで無限に組み合わせも広がります。例えば、「シチー」にビーツを加えればボルシチになる、といった具合です。
ひとつだけ、にんにくだけは寒いロシアで貴重な素材であるため、火を止める直前に加えて大切に大切に香りを味わうんですよ。漬物として食べるのもおいしい「キャベツの乳酸発酵漬け」ですが、この他に炒めものや和え物など、さまざまに活用できます。つけ汁は下味にも便利ですよ。
(2〜3人分)
鍋に一口大に切った牛もも肉200g、キャベツの乳酸発酵漬けの漬け汁1カップを入れて15分ほど浸け込む。水2カップを足し、弱めの中火で30分ほど煮る。
1にキャベツの乳酸発酵漬け1カップ、ローリエ1枚を入れてさらに15分ほど煮る。
塩、こしょう各少々で調味し、にんにくのすりおろし1かけ分とディルのみじん切り1枝分を加えてすぐに火を止める。
器に盛り、好みでサワークリーム*を加え、よく溶いていただく。
*サワークリームは、生クリーム、プレーンヨーグルトを各同量で混ぜ合わせる。市販のサワークリームを使っても。
(※直径12センチ、高さ15センチ程度の壺または耐熱容器2個分・約4人分の場合)
生鮭は漬け汁に15分ほど漬け込んで下味をつける。じゃがいもはよく洗って皮ごと薄切りにする。Aは合わせておく。
壺(または耐熱容器)の内側にバターを薄く塗り、1のじゃがいも、鮭(漬け汁ごと)、キャベツの乳酸発酵漬けを交互に重ね、アルミホイルなどで蓋をして210度のオーブンで10分ほど蒸し焼きにする。
蓋を取って上にAをかけ、さらに10分ほど焼いて焼き目をつける。好みでイタリアンハーブなどを飾っても。
次回は「食のふるさとを訪ねて 最上鴨」をお届けします。
文/𠮷田佳代 写真/竹内章雄
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