特集舘博先生の発酵の科学

しょうゆもろみが できるまで[第1回]

「しょうゆもろみ」と聞いて、その色や香りがすぐに思い浮かぶ人は、あまり多くないかもしれません。しょうゆもろみとは、しょうゆづくりで発酵・熟成段階にあるもの。ではそもそもしょうゆはどのようにつくられるのでしょうか。

舘博先生
東京農業大学教授。しょうゆの研究一筋に40年余という自他ともに認めるしょうゆ博士。品質向上と啓発への活動が認められ、2010年「醤油功労賞(日本醤油協会)」受賞。

原料のすべてが溶け合った 濃厚なしょうゆもろみ

 

 「しょうゆもろみ」と聞いて、その色や香りがすぐに思い浮かぶ人は、あまり多くないかもしれません。しょうゆもろみとは、しょうゆづくりで発酵・熟成段階にあるもの。そこから原料の固形分を分離させたものが、私たちの食生活に欠かせないしょうゆです。

 
 

 つまりしょうゆもろみは、いわばしょうゆの素。このあとの搾って清澄させる段階で取り除かれてしまう、大豆や小麦由来のさまざまな成分が残っているため、通常のしょうゆと比べると、風味がとても濃厚にして複雑。食物繊維がたくさん含まれていることも特徴のひとつです。

約半年の発酵・熟成で 味・色・香りを醸し出す

 そもそもしょうゆはどのようにつくられるのでしょうか。

 まず原料の大豆は蒸し、小麦は炒って砕き、両者を混ぜます。そこへ麹菌を加え、しょうゆ麹をつくります。麹菌はカビの一種なので高温多湿に保ち、約40時間をかけて麹菌を大量に繁殖させます。

 

 

 こうしてできあがったしょうゆ麹と、食塩水とを混ぜ合わせたものが「しょうゆもろみ」。これを約半年間、タンクで発酵・熟成させます。はじめは色が淡く、原料の粒が目立っていますが、発酵がすすむにつれてとろりとして色も濃くなり、熟成に入る頃にはしょうゆらしい味・色・香りを呈するようになります。

もろみの変化

1カ月…色が淡く、原料の粒も目立つ

3カ月…発酵がさかんに行われ、気泡がブツブツと出ている

6カ月…発酵を終えて熟成に入り、しょうゆらしい色と香りになる

 その間、順調に発酵させるためには撹拌して酸素を供給したり、温度を調節するなどのきめ細やかな管理が欠かせません。

 しょうゆづくりの要点を表わす言葉に「一麹、二櫂(かい)、三火入れ」がありますが、二の「櫂」とはもろみを撹拌する棒のことで、つまりはもろみ管理の大切さを意味します。今日では櫂に代えて圧縮空気で撹拌しますが、加減の難しさは変わりません。

 
 

 発酵をつかさどるのは実は多くの微生物たち。そのご機嫌を見きわめ、よいもろみを育ててこそ、おいしいしょうゆができるのです。

次回は陳建太郎さんの「白ごまもろみ冷し豆乳担々麺」のレシピをお届けします。

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