特集米と麹に生きる 新潟県長岡市 高橋さん夫妻の暮らし

発酵調味料で山菜の苦みを おいしくいただく[第2回]

 日本有数の稲作地帯で米づくりをしつつ、越後杜氏として酒づくりにも携わってきた高橋敬(けい)さん。人一倍の体力と精神力を求められる生活を支えてきたのは、自家栽培の野菜と米、それに奥さまの澄子さんお手製の発酵調味料を駆使した料理です。

写真は、澄子さん手製の発酵調味料。右のふたつは酒粕(手前が新物、奥は熟成した越年物)、中央は塩麹(奥)とコチュジャン、左は甘酒(グラス)と味噌。酒粕は、新しいうちはさらっとして硬めの感触ですが、熟成が進むにつれとろりとしてコクが出てきます。料理によって使い分けたり混ぜたりの大活躍。

 麹や酒粕をはじめとして、良質の食材が手に入る環境にあるおかげで、味噌や塩麹、コチュジャン(材料のもち米は新潟自慢の「こがねもち」)も自分で仕込むという澄子さんも、しょうゆをもろみの状態で使うことはなかったそう。こころダイニングの5種のもろみ調味料は、花椒やアーモンドなどとの組み合わせに技と意外性があり、澄子さんのような手づくり派にも納得の商品になっているようです。

 食卓には新鮮な野菜の他に、わらびやうどなどの山菜も並びますが、澄子さんいわく「しょうゆもろみは、青じその葉や、うどなどの野生の苦みと合い、香りを引き立ててくれますね」。

 たとえば、青じその葉のおにぎり。青じその葉に「しょうゆもろみ」をぬってしばらくおき、おにぎり1個に2枚をはさむように貼ります。表面をかるくあぶると、しその風味とあいまって、もろみの香りとうま味が一段と引き立ちます。

 具は山椒の葉の佃煮で、これももろみと好相性。葉っぱと発酵調味料の香気やうま味が加熱によって増すさまは、岐阜県飛騨地方の朴葉味噌に通じるものがあります。

 手前が青じその葉、奥が刻みしば漬けのおにぎり。しば漬けは、夏野菜(みょうが、きゅうり、しその実、しょうが)を塩に漬け込んだもの。「冬には奈良漬のように酒粕に漬け直したりもしましたね」。

スライスしたたけのこに「白ごまもろみ」を添えれば、刺し身ふうの一品にも。

自らの手で米と野菜を収穫し、ご飯とお酒をいただくしあわせ。山野の恵みと発酵の知恵は、さらに豊かですこやかな毎日へといざなってくれるのです。

次回は高橋さん夫妻の「米と麹に生きる」[第3回]をお届けします。

文/吉川優子 写真/越田 昇

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