和食がユネスコの無形文化遺産に登録されたのを機に、そのよさが再認識され、海外からも注目されているのはうれしいことです。
その和食の基礎にあるのがだしです。だしは下味になるほか、加える食材の持ち味を引き出し、料理をよりおいしくしてくれます。
かつお節のだしは、文献では室町時代後期から登場します。江戸後期の武家の食事の記録には「ひらかつお」を煮物や汁物の上にのせるとあります。これは今でいう「花かつお」、つまり薄い削り節のこと。かつお節は長期保存可能なたんぱく源であり、同時に味と香りもたのしませてくれる食品だったわけです。
いっぽう庶民の食事には、みそとかつお節を煮出したものや、かつお節と梅干を酒で煮だして漉し、たまりやしょうゆを加えた「いり酒」という調味料が使われていました。まただしは、野菜や大豆、海藻などからもとれますので、かつお節には手が届かない人々も、それらの煮物の具をおいしく食べ、無意識のうちにだしも味わっていたのだと思います。