亀甲萬本店・初代醤油杜氏の御用蔵案内編

御用醤油醸造所への誘い

御用醤油醸造所、通称"御用蔵"。ここ御用蔵では、季節のうつろいとともに杉桶でじっくり仕込む伝統的な製法で、亀甲萬本店の看板商品「御用蔵」をお造りしています。今回はその御用蔵を、最新の3D画像とともにご案内します。

 

江戸時代から長くしょうゆ造りを行ってきたキッコーマンは、1908年に宮内庁(現在の宮内庁)の御用達を賜りました。1939年に建設された御用しょうゆの専用醸造所、通称”御用蔵” が、現在の御用蔵の系譜。御用蔵では、今でも宮内庁にお納めするしょうゆをお造りしています。手間暇のかかる伝統的な製法のため、数に限りはありますが、皆さんにも御用しょうゆをお楽しみいただけるように、亀甲萬本店では「御用蔵」を販売しています。 さて、早速御用蔵の館内をご案内したいと思います。

 

※本記事の画像は、3D画像の一部を加工したものです

見学コース兼備のしょうゆ蔵

御用蔵では、かつてのしょうゆ造りに用いられた設備などを保存展示しています(来館は予約制)。原料処理や製麹(せいきく)、圧搾などの製造工程の説明とともに、実際に使われていた圧搾機、麹室(こうじむろ)などが見られるのは貴重ではないかと思います。

 

館内には麦煎機や火入桶・清澄桶など、
かつてしょうゆ造りに用いられた設備が保存展示されている

 


3日かけてしょうゆ麹をつくっていた麹室。
原料と麹菌を平らに盛り込んだ麹蓋が作品のように積まれている。
かつては窓の開け閉めや火鉢で温度・湿度を調整していた

 

ハイライトはやはり杉桶でしょうか。現在もしょうゆの仕込みに使われている原寸の杉桶を直近で見ることができます。初めて見る方は、なかなかのスケール感に驚かれるかもしれません。この桶は、杉板と竹の箍(たが)でできており、“ご先祖様”と呼ばれる酵母、乳酸菌などの良質なしょうゆ造りに欠かせない微生物たちが棲んでいます。

 

杉板と竹の箍でできた杉桶。大きさは直径2メートル、深さ1.7メートル

 

いざ、御用蔵の仕込室へ

杉桶横の階段から階上にあがると、仕込み中の御用しょうゆとのご対面です。階段は仕込室と同じ、鮮やかな朱色に染められています。内壁から天井に至るまで総朱塗りのしょうゆ蔵は、私の知る限りでは、日本、そして世界でもここだけ。一見の価値がある特別な空間です。外国の方をお連れいただいても、とても喜ばれると思います。

 

 

 

杉桶の中で長い期間、発酵・熟成を重ねる諸味はまさに生きもの。ご来館いただくタイミングによっては、時よりプツプツと諸味が息をする様子がご覧いただけるかもしれません。作業スペースで桶に耳を近づけると、パチパチというような、何ともいえない音が聞こえることもあるんですよ。

 

この日は撮影ということもあり、特別に入室許可が出ていますが、仕込室は普段限られた人間しか入ることができません。専任の仕込み担当者は、私が手に持っている櫂棒(かいぼう)で桶の諸味を攪拌して、発酵の進み具合を五感で確かめます。諸味の具合や周囲の温度・湿度によって、その程度を見極めるのは、匠の技と言えるのではないでしょうか。

 

総朱塗りの仕込室は荘厳な気配が感じられる

 

御用蔵のご案内は、いかがだったでしょうか?最後に、御用蔵の沿革を紹介いたします。
当初、御用蔵は江戸川沿いに建設されました(1939年のこと)。その後、70年の節目の修繕のタイミングで、現在の野田工場脇に移築されました。その際、仕込み木桶、屋根の小屋組み、屋根瓦、石垣、門などは移築前のものを使用して、原型に近い形で再現したんです。入り口や庭からは城郭のような石垣や屋根瓦が目に入ります。屋内から見上げていただくと、小屋組みの梁もよく見え、当時の面影を感じていただけるのではないかと思います。今回3D画像化を行うことで、WEBサイトなどではなかなか掲載できていない部分もご覧いただけるのではないでしょうか。

 

館内を見上げると、長い梁木の渡った小屋組み

 

屋根瓦や外郭は当時のものを移築。70年以上の歴史ある情景の保存に努めている

 

事前のご案内はほどほどにしまして、3Dを実際に操作いただくと、より臨場感を感じられると思います。下のリンクより御用蔵見学をお楽しみください。

 

3D御用蔵見学

最新の3D画像技術で撮影した御用蔵をご覧ください。
画像クリックでスタートします。また、右下のボタンで全画面表示できます。

花田 洋一(はなだ よういち) 亀甲萬本店・初代醤油杜氏。キッコーマンにて長年しょうゆの新商品開発、醸造技術開発に携わる。造り手の視点から、しょうゆ醸造全般に関する歴史と伝統、しょうゆの魅力、発酵の奥深さ、しょうゆの使い分けや食材との相性などを発信している。